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(ワインの里・ピニャオン)
Portugal Photo Gallery --- Pinhao

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ピニャオン1
ピニャオン駅

ピニャオン2
アズレージョの駅

ピニャオン3
ホームの出入口

ピニャオン4
段々畑に囲まれた町

ピニャオン5
列車が通る

ピニャオン6
ピニャオンの町

ピニャオン7
段々畑

ピニャオン8
釣り日和

ピニャオン9
会話

ピニャオン10
釣り

ピニャオン11
日課

ピニャオン12
改装したホテル

ピニャオン13
路地裏

ピニャオン14
橋工事

ピニャオン15
ブドウ色

ピニャオン16
鉄橋の下

ピニャオン17
バス掃除

ピニャオン18
ドア番

ピニャオン19
のぞき込む子供たち

ピニャオン20
ひょうきんボーイズ

ピニャオン21
カメラ好き

ピニャオン22
ワイン貯蔵庫

ピニャオン23
殺人事件?

ピニャオン24
ワインかす

ピニャオン25
ワイン

ピニャオン26
ワインセラー

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オリーブの実

ピニャオン駅のアズレージョ

ピニャオン28
アズレージョ・1

ピニャオン29
アズレージョ・2

ピニャオン30
アズレージョ・3

ピニャオン31
アズレージョ・4

ピニャオン32
アズレージョ・5

ピニャオン33
アズレージョ・6

ピニャオン34
アズレージョ・7

ピニャオン35
アズレージョ・8

ピニャオン36
アズレージョ・9

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アズレージョ・10

ピニャオン38
アズレージョ・11

ピニャオン39
アズレージョ・12

ピニャオン40
アズレージョ・13

ピニャオン41
アズレージョ・14

ピニャオン42
線路を走る車

☆ピニャオンの説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
レグアからドウロ川沿いに東に23kmにワイン産業の要所のピニャオンがある。
かつては、ワイン樽が帆船ラベーロでポルトへと出荷されていた。
トラックにかわった現在は、リバークルーズ船の発着場となっている。
その前には、かつてのワイン倉庫を改装した豪華なホテルが建っている。
ピニャオン駅は、ブドウの収穫の風景を描いたアズレージョで飾られている。

「ポー君の旅日記」 ☆ ピニャオン ☆ 〔 文・杉澤理史 〕

≪2006紀行文・6≫   === 第二章●ドウロ川上流アルト・ドウロ地帯を行くC === 

          《アズレージョが美しい駅 ピニャオン》

 トウア駅から30分でピニャオン駅に着き、下車した。 (1.15ユーロ×2=2.3ユーロ345円)
 この日、10月25日(水)朝、レグアから列車に乗ってトウアに向か った。その時、ピニャオン駅で50分間車内で待たされた。すれ違う上り 列車が事故らしい。その車中で偶然会った若いカップルに折り鶴を相棒が 伝授した。撮影取材を終え昼過ぎトウア駅から列車に乗りこんだ車中で若 いカップルと再会。不思議なご縁であった。
 女の子が《折り鶴先生!》と相棒に飛びついてきた。 あの《折り鶴教室》がよほど嬉しかったようだ。相棒の目が潤んでいた。 その二人が列車の窓ガラスを開け折り鶴を高く振りあげた。 女の子が相棒に《オブリガーダ!(ありがとう!)》と叫んだ。 男の子は《チャゥ!(バイバイ!)》とポーに手を振った。 2人はポルトから日帰りで列車の旅を楽しみに来たポルト大学の学生だった。 もう、二度と会えないだろう。 《アデウス!!(さよなら!)》とちょっぴり感傷的に、ポーはふたりに 大きな声で応えた。 窓から手を振り続けるポルトに向かう列車が遠くなっていった。

「けいの豆日記ノート」
 トウアから、ポシーニョまでいった列車は、30分くらい停車して、折り返してくる。 事故で、列車が遅れていたので、停車時間なして、折り返してきたのだ。 学生っぽいふたりは、ポシーニョに行くのが目的でなく、途中のドウロ川の景観を見たかったのだ。 トウアにいた1時間の間に同じ列車が終点まで行って帰ってきたことになる。 わかれたふたりに会うことができるとは、なんか不思議だった。 学生なら、ネットはしていると思ったので、ホームページの紹介をしておいた。
 1ヶ月後くらいに、メールがあった。 「言葉は、わからないが、写真は見ることができる。 温かさが伝わってくるような写真だ。 写真は、世界共通の言葉である。」
 学生の名前は、聞かなかったが、きっとこの列車の学生だと思っている。

 アルト・ドウロ地帯を行ったり来たりした町は 《ポルトから、レグア→ ピニャオン→トウア→終点ポシーニョ》 だった。これが、今回ふたり旅を し、撮影取材を楽しんだ列車駅である。終点ポシーニョと書いたが終着駅 と書かなかったのは、線路がまだ先まで延々とのびていたからだった。終 点と終着とは違う、とポーは思う。 昔からピニャオンもレグアと同じようにワイン産業が盛んな町だった。 葡萄原酒を積めこんだ樽をラベ−ロという小さな帆船に乗せポルトに運 搬したアウト・ドウロ地帯の輸送基地であった。
 ピニャオン駅もトウア駅と同じように外観は白壁の駅舎だったが2倍ほ ど大きい。圧巻は建物の周りに飾られたアズレージョ(タイル画)だ。 青を基調に葡萄収穫や運搬、生産などのタイル画がその周囲もタイル画 の金額縁の花模様で飾られている。15枚ほどのタイル画が駅舎外壁面を 帯状に並び、見て飽きないきめ細かな絵模様が展開し充分楽しませてくれた。

 駅舎から見るとホームと線路の向こうはドウロ川。左手に工事中の橋が 対岸にかかりその先は丘陵になり、葡萄畑が重なって空へと伸びているのが見える。 駅舎の反対側は、石畳のそれほど広くない道路が川沿いに伸び、3階建 ての白い外壁の建物が連なっている。

          《だまされたレストラン》

 相棒が吐いた。『おなかすいたね−!』1時を過ぎていた。 駅舎から2分も歩かないところで白いコック服を着たおじさんに呼びと められた。レストランの呼び込みだとわかる。 入った。垢抜けた室内であった。ここなら旨いものを食わせてくれそう な雰囲気があった。客も3組入っている。この時期だ。観光客は見ない。 だから地元客が入っているとポーは判断。味は間違いないと確信した。
 あのコック服のおじさんがグラスワイン2つ持って注文取りに来た。 相棒が壁に張ってあるメニューを覗きに行って決めた。 そして、強調した。
 『一人前!一人前よ!』 おじさんは「ドイス(二人前)?」と。
 『ナォン!NO!ウン!一人前!』 相棒は人差し指1本を突き上げた。 「Sim!」判ったと頷いた。本当に判ってくれたのかとポーは不安だ。 グラスワインの赤い色がルビーだった。 ポーが飲もうとした時、相棒が『これは、サービスかなー。だって、頼 んでいないもの』と言った。
 赤ワインのグラスワインが目の前で待っている。ポーには酷だ。 トウア駅前のレストランで飲んだグラスワインが150円だったので、 二人で飲んでも300円。被害限度枠だと言って、ポーは飲んだ。 のど越しが軽やかでコクがあって美味いワインだった。

 《旨いネー!》とポーが奥に声をかけると、あのコック服のおじさんが 来て、ゴジャゴジャ言った。《エ ボン!(旨いね!)》とポーが答えた。 小さなピッチいっぱいの赤ワインとパンを山盛りにしたバケットを持っ ておじさんが再登場した。パンは断った。ワインは美味しかったので断れ なかった。
 ピッチ全部飲んでも500円ぐらいとポーはふんだ。それが、間違いだった。 ピッチのワインをひと口飲んで、やられた!と相棒に報告。不味かった。 グラスワインの赤ワインではなかった。ピッチワインを投げつけたかった。
これは!サギ商法だ、舐められた! あのおじさんを目で捜したが、姿なし。  料理を断ろうと思ったとき、スーとタイミング良く20代の可愛 い娘が笑顔で運んできた。 豚肉と人参ジャガイモをオリーブ油で煮たものに、骨付き羊肉煮とオリ ーブ炒めご飯の3品。それが一人前ランチだ。 骨付き羊肉煮は、ほとんど骨だけだった。 全部で15ユーロ(2250円)のメモ紙が突き出された。 訴えてやるー!の心境だった。こんな時にしゃべれない自分に激怒した! (レストランの名前は覚えているが伏せてやる)

「けいの豆日記ノート」
 レストランで、おいしいものを食べる期待はしないようにしている。 食材も味付けも違うでしょうし、好き嫌いもあるでしょうし。 自分が美食家でなくてよかったと思う。 多少、まずくてもなんでも食べれるほうだからだ。 お腹が膨れれば、とりあえず、いいとしよう。 こんなふうに書くと、まずいものばかりのようだが、もちろん、おいしいものもあるので、ご心配なく。 果物は、安くて、おいしいので、うれしい。

          《トラック殺人事件か!》

 レストランを出た。料理もまずく残した。不味くても『もったいない!』 と食べつくす相棒だったが残した。ポーは腹が立っていたが相棒は『こん なものよ』と平然としていた。 その時だった。レストラン前の石畳が血で染まっているのを発見した。  《ピニャオン石畳殺人事件》か?もう《火曜サスペンスドラマ》の世界だ った。ポーは一瞬そう思った。息が詰まった。 レストランに入るときはなかった大型トラックが止まっていた。 トラックの荷台から流れ落ちた血が大きなタイヤを伝わり石畳に流れ落 ち広がっていた。死体は荷台の中だ。単純な推理だった。
 『ポー、葡萄の香りがするね』 相棒の声で現実に戻った。レストランから出て来たおじさんが運転席の ドアを開けた。トラックの運転手だ。 ポーは、走り寄り聞いた。頭髪の薄いおじさんは笑って荷台のシートを めくってくれた。葡萄の皮の山だった。つまり、葡萄を絞ったカスが山積 みされていたのだ。流れ出た血は葡萄カスから流れ出た汁だった。 《ピニャオン石畳殺人事件》の結末は呆気ない。葡萄かす汁の《血》が石 畳に吸いこまれ、大地に消えていった。

 ポーは考えていた。 あの葡萄のしぼりかすは何処に捨てるのか。何かの肥料にするのか。そ れとも産業廃棄物として焼却場に持ちこみ廃棄するのだろうか。それが気 になっていた。 豆腐を作った後に出る《オカラ》に着目してニュース番組で放送したこ とがあったからだ。23年前のことだった。早朝、近所の豆腐屋の前に停 まっていた小型トラックにオカラを積みこんでいるのを目撃した。 親父に聞くと口ごもる。熱意で落とした。オカラが売れない。オカラの 食べ方を知らな人ばかりでなく、オカラって何?の世代だと知った。 夏場は特に腐りやすいのでオカラの処分に悩まされれいると言う。 今やオカラは廃棄物だったのだ。豆腐屋さんは処分に月何万と廃棄物業 者に出費だとこぼした。 そのことがあったため、ここでも葡萄かすは産業廃棄物になっているの ではないかと思ったのだった。

「けいの豆日記ノート」
 石畳の赤い汁にはびっくりだった。 こんなところで、殺人事件かと・・・そんなわけないか。 ブドウだとは、思わなかった。 10月は季節的にブドウの収穫が終わったばかりだった。 残念ながら、いつもブドウの収穫時期をはずしている。 トラックいっぱいのブドウのカスがでるということは、元のブドウはどれだけあったのだろう。 ブドウの皮もいっしょにつけこむのかと思っていた。 ブドウの汁を流しながら走るトラックなんて、日本じゃ考えられないなあ。

          《オリーブの実》

 相棒の発案で橋を渡って対岸に行ってみることにした。 踏切を渡ると工事中の鉄橋だ。 全長100m程の鉄橋両側は橋げた工事のため、二車線が一車線しかな く車が一台やっと通れる狭さだった。
 『渡ってもいい?』若い職人に相棒が聞く。 《日本人か?》と聞かれ相棒が頷く。 《日本人と話すの初めてだよ!》若い顔に満面の笑みが浮かぶ。 対面からワゴン車がゆっくり走って来た。若者はその車に向かって怒鳴 る。車が止まると先導して我々を車の後ろまで連れて行ってくれた。 その先は道が開けていた。対岸に見える信号が青から赤に変わった。あ の若者の配慮だった。『ありがとう!オブリガーダ!!』相棒は手を振った。 若者の日焼けした顔に大きな笑みが刻まれていた。 対岸の空に青空が見え隠れし、斜陽が現われた。

 橋を渡って川沿いの道を下流に向かった。左側は水がにじみ出る岩肌の 崖になってそそり立ち、その先に段々状に葡萄畑が広がっていた。 間近に見る葡萄畑は砕いた石コロ混じりの耕地だった。これでよく葡萄 が育つものだと思う。 段々畑は平石を厚く積みあげ、段々状に築きあげ空に向かって幾重にも 折り重なっ伸びていく光景は圧巻であった。
 右側はオリーブの木がドウロ川沿いの沿道に連なって植えられ、木によ って緑や黒、紫や桃色の実がぎっしりたわわに実っていた。 レストランに行くと注文を取りに来て必ず置いていくのがオリーブの実 だった。
 塩漬けの《漬物》オリーブでワインを飲む。大根やナスの漬物で 日本酒を飲むのと同じだ。大根やナスからは油は採れないが、オリーブの 実からはオリーブ油が採れる。オリーブ油はこちらの食文化の基本だ。 そのオリーブの木々の間からピニャオン駅舎や紅葉した木々がドウロ川 に映りこんでいた。その背景には、葡萄畑が200段以上も小山の頂上ま で重なっているのが見える。アルト・ドウロ地帯はまさにポートワインの 故郷だった。

 30分も歩いてきたのに誰にも会わなかった。 見渡す限りの丘陵地帯がドウロ川の両側に遥か彼方まで延々とつながっ ているこの地こそが、ポルトガルが誇るポートワインの原産地風景なのだ と嬉しくなった。
 その地を歩いている《今》が楽しく、感無量にしてくれた。 レグアまで戻る列車まで3時間ほどあった。 工事中の橋まで戻るのに30分。渡って駅まで5分。充分、間に合う。 なにせ一日5便の列車路線だった。相棒の頭は時刻表。まかせておけば いい。
 《数字》と《一度通った道》と《地図》には滅法強い。 旅人に必要な3要素を備えていた。 ポーは方向音痴の数字下手だった。 その両極端のポルトガル二人旅が6年も続いていた。

「けいの豆日記ノート」
 はじめの計画では、ピニャオンでは、1時間ほどの散策だった。 1日、片道5本しかない列車だ。 散策1時間は、短いとも思ったが、その後の列車は夕方しかなかった。 午後1時の列車の次は6時までなかった。 だから、早くレグアに戻ったほうがいいと考えていた。 でも、ピニャオンの町を見て、考えがかわった。 1時間では、橋のむこうまでいくことはできない。 川沿いの山道を歩いてみたかった。

          《ワイン工房に入る》

 橋の近くにワイン工房があった。鉄扉の門構えがいかにも老舗雰囲気が あふれ引き込まれて敷地内に入った。広大な敷地だ。 左手に工事中の橋が見え、ドウロ川沿いに白い建物が奥へと連なりゴミ ひとつ落ちていない通路が心地よかった。 人の姿もない静かなワイナリーに相棒のシャッター音だけが響いていた。
 その時、何処からか突然背の高い真っ赤なニット姿の中年女性が現れた。 監視カメラが設置されているのだろう。それに、ふたりの姿が映ったのだ。 相棒の反応が良かった。
 『ド ジャパォン(日本からです)!』 彼女の怪訝(けげん)な顔に笑みが走る。《こっちに来て》彼女の合図 に従ってついて行った。ワインショップだった。鍵を開けて中に案内され る。《Wine Shop Carvalhas》の文字があり、棚にポ ートワインが陳列されていた。一本100ユーロ(15000円)のワイ ンが高い方で驚くほどでもなかった。
 相棒は、わざわざショップを開けてくれた彼女との出逢いも、何かの縁 だと、赤と白一本づつを買った。一本2.8ユーロ(420円)。彼女の期 待を裏切ったようだ。かたの線ががっくと落ちたのをポーは見逃さない。 ポーはすぐ飲んでみたかったが、相棒のリュックの中に消えていった。 目的は葡萄を搾り出す原酒製造を見たかったが、彼女は微笑んだだけだった。 すんなり、断られた。しゃべれれば《落とせる》のにと、ポーはそれが悔しかった。

「けいの豆日記ノート」
 ワインを買う予定は、なかった。 外から見るだけでよかったのに、わざわざ、店を開けてくれた。 しかたなく、1番安いワインにした。 それでも、スーパーで買うワインの何倍もする。 泣く泣くのワインもだれの口にも入らなかった。 小さいワインだったので、記念に日本に持って帰ろうとしたのが間違いだった。 帰りの空港の手荷物チェックで没収されてしまったのだ。 そんなバカな・・・ こんなことなら、飲ませてあげればよかった・・・

 工事中のあの橋を信号の青で、対岸に渡った。 あの若者を捜したが、いなかった。寂しかった。お礼の一言が言いたか ったからだ。 橋を渡ってピニャオン駅に行き、プラットホームのベンチで休んだ。 5時で駅舎は閉鎖されていたからだった。トイレも鍵がかけられていた。 背後に飾られているアズレージョ画を再度振りかえる。何度見ても傑作 アズレーョだとポーは思った。 腰につけている万歩計を見た。17445歩を刻んでいた。 あと2時間、列車が来るまであった。 ホームで犬がのびのびと寝そべって大きな欠伸をした。

 川岸にある公園に下りた。中年のおじさん二人が釣りを楽しんでいた。 釣り人と言えば赤や青のポケットがいっぱいある釣り用の防寒服がこの時 期の日本的釣り人だが、こちらの釣り人は町をぶらりとセーターを着込み 歩いている人そのまんまの服装だ。その姿が、ポーは好きだった。 10分ほど見ていたが一匹も釣れなかった。顔に笑みは消えていない。 釣れても釣れなくても、釣り人はその雰囲気を楽しんでいるのは日本の釣 り人と変わらない。釣り人は不思議なことに短気の人が多いと聞いている がポルトガルでもそうなのだろうか。
 その釣り人がいる川岸にクルーズ船の発着場がある。川岸は樹木が茂り 紅葉した葉が川面に映え、細長い公園沿いを飾っていた。 ブイにつながれたモーターボートが並ぶ中にラベ−ロが葡萄樽を積んで 浮いていた。観光用の帆船だったが、かつて下流のポルトに原酒を運んだ 帆船ラベ−ロの姿は午後の陽射しを浴びて美しいと感じた。
 その公園沿いの広い敷地に赤い屋根のホテルがある。昔のワイン倉庫を 改良したというが、白い外壁に青い窓が並び洒落た宿が西日に浮かんでい た。泊まってみたい宿だ。内部を見たいと思ったが、やめた。もし、この 宿が安くてすてきな空間の宿だったら、リサーチ不足でポーが相棒に殴ら れていたかも知れない。青い水面があった、この時期寒くて泳げないプー ルが見えた。

 列車が来るまで1時間あった。駅舎前の薄暗いカフェに入った。普通な らカフェに相棒が入るはずがない。100円でも無駄の二人旅費を使わな い旅を6年も続けていたからだ。でも、入った。それは相棒のトイレのた めだった。駅舎のトイレに鍵がかかっていたからだった。何故、鍵をかけ るのか不思議だ。(前に、何か不都合があったためだろうか・・・)
 相棒が頼んでくれたビールとガラオン(=ガラスのコップに入った暖かいカフェオレ)が来た。 二人で1.5ユーロ(225円)。ビールは水と同じ値段だ。
 店の外に覗きこむ小学生の《餓鬼》どものひょうきん顔が4つも現われ、 相棒を挑発してきた。《日本人》がいるぞ、という情報が少年の間に流れ たようだ。相棒がカメラを向けるとおどけてみせた。 こいつらが、良い顔をしていた。映画の世界に移動できるキャラクター を持っていた。餓鬼どもの弾けた笑顔に少しばかり感動したポーであった。

「けいの豆日記ノート」
 駅の前のカフェしか、店がなかった。 小さなカフェで、イスが10個くらいしかなかった。 敷地が狭いわけではない。 カウンターと壁際のテーブルまで、なんにも置いてない場所があった。 なにをする場所なのか。 シーズンのときには、テーブルが置かれるのだろうか。 トイレは、奥のラセン階段を下りた地下にあった。 地下は、倉庫のようになっていた。 その奥にあるトイレは、扉が壊れていて、鍵がかからなかった。 トイレは、ここしかないので、しかたがない。 だれも来ないこと願って、早々にすませた。

 駅舎に戻る。 餓鬼どもが増えて待っていた。列車待ちの日本人だと察知していたのだ。 餓鬼どもの中にハリーポッターがいた。黒ブチ眼鏡の少年は《彼》だった。 うりふたつ、だった。 餓鬼どもにポーは近ずき彼に聞いた。
 《君はハリーポッター》かと。  彼は《ウン》と頷いた。 あり得ない返事が返ってきた。 そして、餓鬼どもが弾けた。ホームに倒れこんで笑う少年もいた。 はめられた。 青いパッカーを目深に被った少年が吐いた。
 《こいつは、そっくりだもんな!》 ポーも言った。《アメリカに連行だ!》 餓鬼ども6人がホームに全員倒れこんだ。
 今日最後のポルト行きの列車がホームに入ってきた。 アズレージョの前のベンチから腰をあげ、列車に乗り込む。この駅は忘 れられない駅舎だ。そして忘れられない町のひとつだとポーは思った。 車窓からドウロ川に映えるオレンジ色がぼんやり過ぎ去って行くのが見えた。 宿泊のレグア駅に着いたときは夜空に星が散っていた。

                              *「地球の歩き方」参照*

終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。 次回をお楽しみに・・・・・・・2008年4月掲載

掲載済み関連写真===≪ポルトガル写真集≫2006年版旅日記
前途多難の予感のポルト 出会いのポルト ドウロ川終着駅のポシーニョ アルトドウロの基点のレグア2

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