    見張り台のふたり
    
リスボンから電車で40分ほどで、シントラの町に着く。 
リスボンの西28km、緑の木々にしっとりと覆われたシントラ山。 
イギリスの詩人バイロンは、「エデンの園」と称えた。 
美しい文化的景観は、1995年、世界遺産にも登録されている。 
大航海時代の昔からときおり歴史の表舞台に顔を見せた。 
現代にいたっては国内でも有数の観光地になっている。
  
大西洋のパノラマを楽しめるペーナ宮殿。 
ドイツから建築家を呼び寄せ、1850年に完成した城である。 
イスラム、ゴシック、ルネッサンス、マヌエルなど各様式の寄せ集めである。 
それがまた奇妙な魅力を生んでいる。 
標高500mの山頂からの展望はすばらしい。
  
リスボンから近く、交通の便もいいことから多くの観光客が訪れる。 
ペーナ宮殿の城壁の見張り台からの見晴らしはすばらしい。 
いくつもの見張り台には、だれかが登っている。 
その中で見つけたふたりだった。 
「カッコよく撮ってくれよ。」 
「わかったわよ。まかせなさい。」 
「生まれてくる子供にも自慢してやるんだ。」 
「あなたったら〜 気が早いんだから〜」 
こんな声が聞こえそうである。
 
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